長谷寺の「だだ押し」
迫力があって盛り上がる、長谷寺の追儺会、通称「だだ押し」を紹介します。暴れまわる鬼をたいまつが追いかけて、押し合いへし合い、火の粉も飛んで・・・・・・危ないけど楽しめる行事です。
開催日:2月14日 場所:長谷寺本堂
「修二会」最終日の行事
長谷寺のだだ押しは、2月8日から14日まで行われる「修二会(しゅにえ)」という法要のラストを飾る行事。正式には「追儺会(ついなえ)」といって、ふつうは節分にやる行事です。
14日の夕方、本尊の十一面観音に人々の罪を懺悔する、修二会の「最終回」の法要があります。これはまだ「ふつうの法要」。次に、閻魔さまから与えられたという、悪魔を鎮める力がある「宝印」が登場して、仏様やお坊さん、集まった参拝客などの額に「ハンコ」を押して加持します。この日だけ売り出される「牛玉札(ごおうふだ)」を買うと、本堂に入って座って見られます。
暴れる鬼と、それより迫力あるたいまつ
宝印の加持をやっているタイミングで、堂内にホラ貝と太鼓の音が響き渡って、いよいよ鬼の登場。青鬼・緑鬼・赤鬼が出てきて暴れます。そこでさっそく、宝印のパワーで鬼を追い立て、鬼は逃げまどい、本堂の外へ。本堂まわりの回廊部分に出てきた鬼は、今度は重さ100kg以上もある大たいまつに追われます。1匹ずつ出てきては、鈴なりの観客に接近して「ガオー」と猛アピール。この鬼、なんでも1パイひっかけているとか。
鬼もさることながら、迫力があっておっかいのは、たいまつのほうです。最前列のベストポジションにいる人は、燃えさかるたいまつが「真上を通過する」感じで、うまくよけないと危ないです。実際、火の粉で洋服に穴が開く人もいます。そんなわけで、鬼は近くで見たいし、たいまつはよけなきゃいけないし、押し合いへし合いで、「のんびり見物して楽しむ」という感じではありません。写真を撮るのも一苦労。
追われた鬼が退散すると、たいまつは本堂横のスペースに投げられて、解体されます。燃えさしを持って帰ると無病息災ということで、待ってましたとばかりに観客が群がります。
長谷寺ならではの法要スタイル
奈良で「修二会」とか「たいまつ」と言えば、東大寺や新薬師寺も有名。ただ、長谷寺がユニークなのは、鬼が出てくるのもさることながら、法要で何をやっているか、マイクで説明してくれるところ。他では、前もって「予習」しておかないと意味がわからないだけに、ありがたいですね。そのぶん、厳かに法要だけが続く他のお寺とは、だいぶ雰囲気が違います。
長谷寺のだだ押しは、修二会と節分がいっしょになったような、奈良の名物イベント。真冬だし、寒い奈良の中でも山あいでひときわ冷えるところですが、寒さも忘れる白熱のひとときを過ごせます。写真を撮る人は、いい場所を取ろうと思ったら、だだ押しが始まるかなり前から場所取りが必要です。寒さと火の粉には十分ご注意を。