花祭り
色とりどりの花で飾られたお釈迦様が華やかな「花祭り」を紹介します。お釈迦様の誕生日を祝う行事で、お寺ごとにそれぞれのスタイルで法要・甘茶かけなどが行われます。
開催日:4月8日 場所:各地のお寺
花祭りとは
花祭りは、お釈迦様の誕生日を祝う行事。全国のお寺で行われます。基本的には、生まれたばかりのお釈迦様を表した像に、足元のお盆「潅仏盤(かんぶつばん)」に入った甘茶をかけてお祝いするスタイルです。お釈迦様が、生まれてすぐに7歩歩いて、天と地を指さして「天上天下唯我独尊」と言ったということと、龍が甘露の雨を降らせた、という伝説を表しています。
潅仏盤は、色とりどりの草花で飾った「花御堂(はなみどう)」の中に置かれて、これがまた春らしい華やかな眺め。たいていのお寺では甘茶の接待もあって、なんともいえないフシギな甘さを味わえます。
基本的なスタイルはだいたいどのお寺でも同じですが、花御堂を置く場所などにオリジナリティーが出ています。
東大寺の仏生会
会場はやっぱり大仏殿。この上なく「らしい」ロケーションですね。大仏殿の正面入り口前に、屋根だけでなく柱まで草花で包まれた花御堂が置かれます。お釈迦様がジャングルの中にいるよう。さすが奈良の人気ナンバーワンスポットだけあって、甘茶かけの長い行列ができます。
朝8時から、仏生会の法要があります。散華(さんげ:花びらに似せた色紙を投げる儀式)したり声明を唱えたりします。ただ、お釈迦様のお祭りなのに、花御堂の前じゃなくて大仏さまの前でやるのがおもしろいです。
興福寺の仏生会
会場は、朱塗りの鮮やかな南円堂前。興福寺は、本堂にあたる「メインの建物」がない状態なので、南円堂がその代わり、といったところでしょうか。屋根を中心に鮮やかに飾られた花御堂が置かれます。
法要は10時から。花御堂前のテントの下に、お坊さんが並んで座って、こちらも散華や声明が印象的な法要です。法要が終わると、まずお坊さんが順番に花御堂で甘茶をかけて、終わると一般の人もかけられます。
唐招提寺の佛生会
唐招提寺では、50年以上も中断されていた佛生会が、2012年に復活したそうです。
金堂正面前に置かれる花御堂は、復活に合わせて作った新品で、他のお寺と比べるとかなり小ぶり。屋根や柱はそのままで、四隅にこの時期らしいボケやユキヤナギが飾られます。東大寺や興福寺と比べると質素ですが、上品な感じ。静かで落ち着いた唐招提寺らしい花御堂、という気もします。
法隆寺の仏生会
会場は、宝物が見られる大宝蔵院の手前にある食堂(じきどう)。ふだん非公開で、特に目立つ建物でもないですが、奈良時代にできた国宝建築です。さすが国宝の宝庫、法隆寺。仏生会の日だけ中に入ってお参りできるので、貴重な機会です。
法隆寺の場合は、お釈迦様があるのは食堂の中。かなり小さな釈迦像が、本尊の薬師如来前の祭壇上に置いてあって、花御堂もなし。かわりに、まわりに花が飾られています。このお釈迦様、ふつうとは逆に左手を上にあげているめずらしいもの。
花祭りのころは、桜をはじめ春の花がいろいろ咲く気持ちのいい時期。お寺ごとに個性のあるお釈迦様にお参りして、甘茶をかけたり味わったりすれば、印象深い春の一日を過ごせます。花祭りの日に奈良に行けたときは、「甘茶のハシゴ」を楽しむのもよさそうです。